医療物品

大塚の生理食塩水 ~膀胱洗浄について~

大塚製薬の生理食塩水250ml、これの便利な点は、膀胱洗浄に使えること。はさみで上部をカットしてコップのようにすれば特に容器を準備しなくても生食が使えます。膀胱洗浄のように広口シリンジを使うのに便利です。ちゃんと自立して立ってくれるのが嬉しい。最近ビニールのソフトパックが増えている中、この製品は貴重です。プラスチックボトルは他に、例えば同じ大塚でも500mlサイズがありますが、容器が丈夫すぎてはさみでは切れません。これは普通のはさみでもスイスイ切れます。別に容器を準備しなくてよい、って、それだけのことですが、無菌の容器を準備するのは在宅では結構大変だし、患者さんのご自宅での保存もしやすいので助かります。

注意点は、カットするときに内部に破片が混入しないよう、気をつけて切ってください。ギザギザに切ると破片が入る危険があります。この点でも切りやすい硬さはとても重要です。それから当然のことながらカットした断面は滅菌状態ではありませんので、「清潔」を気にするならシリンジが断面に触れないよう注意しながら使ってください。このような点から100%滅菌とは言えませんが、在宅で膀胱洗浄に使うくらいなら許容範囲と考えています。

これは医薬品ですので、訪問看護師さんが使うためには主治医の先生に依頼して下さい。処置用の薬剤として保険請求は可能です。もちろん点滴用としても使えます、というかそれが本来の用途です(^^)

膀胱洗浄と言えば、昔は病院でも定期的に行っていたものですね。経験25年以上の看護師さんにとっては、「尿道バルーンカテーテルが入っていたら定期膀胱洗浄は常識」の感覚が残っているのではないでしょうか。その後泌尿器科の先生方が無意味どころか逆効果と唱え、膀胱洗浄はすっかり病院から消えました。その理由は、尿路の中で最も雑菌が多い出口側から逆行性に水を押し込むことで、膀胱圧が上がって最も無菌であるべき尿管や腎盂へ菌を送り込む危険性が高まる、というものです。だからカテーテルが閉塞しない限り膀胱洗浄はするべきではないし、本当に閉塞したらカテーテルを交換するべきだ、という理論。今やこれが病院での常識。さらに最近では定期的にカテーテルを交換する必要はなく、閉塞したら交換で充分、ということに病院ではなっているらしい。「定期的」という言葉、泌尿器科の先生には不評です。

それら論理は正しいです、はい、異論はありません。病院ではね。でも、在宅医療ではカテーテルが閉塞してから交換ではとても困るんです。夜中に「おしっこが出なくて苦しい。布団がべたべた」と緊急コールがあってから交換するのは避けたい。それだけでも大変なのに前立腺肥大などで挿入困難の場合は本当に困ります。救急車で病院に行くのか?大変だ。それ故、通常の訪問時間帯でできることはしておきたい。ので、定期膀胱洗浄、は上記理由からしていませんが、定期的カテーテル交換は在宅ではしかたがないと思っています。

話を膀胱洗浄に戻して、だったら膀胱洗浄は絶対しないかと言うとそうではなくて、何か異常があった時の確認の方法として、つまりいざという時在宅では結構役に立ちます。つまり、「膀胱を洗浄」ではなく「膀胱とカテーテルの異常確認」には結構役立つのです。例えば、バルーンを挿入している方の陰部から出血があった場合。どこからの出血かを確認するため、膀胱洗浄を試みます。それにより新鮮血や血液塊・浮遊物の有無の確認ができます。膀胱洗浄をしようとしてもできなければ、カテーテルが閉塞していると確認できます。尿道カテーテルが入った状態での生活は必ず出血のリスクがありますので、当院ではいざという時に訪問看護師さんが使えるようにこのボトルとシリンジをセットで、膀胱洗浄用品として患者さん宅に置いておきます。